お茶室で聴く 笙と波紋音の響き〜神と人と音楽と〜
前回の資料とは別にお話のほうは、持参した楽器などの音を実際に出しながら お話しました。
まず、講座のために持参した楽器の音を出す
*メキシコのスリットドラム「テポナストリ」
スリットドラムというものが、世界中にあること。丸太をくりぬいた大きなものを儀式や祭礼に使っていたのが最初だが、竹の豊富なインドネシアなどでは素材が竹になり、サイズも小さくなり、合図などに使った。 この楽器は高円寺をふらふら歩いているときにふと発見したもので、ポコポコとかわいい音がするのでお気に入りの楽器だ。正式名はテポナストリというらしい。マヤ文明の伝統を受け継ぐ楽器で、祭礼や儀式に使われたものらしい。
*オーストラリアのアデレードで買ったクラベス
スリットが入っていて共鳴箱のあるものと、無いものとではどう音がちがうのかということで、スリットの無いものとしてクラベスを使った。 あらゆる楽器というものは、共鳴させる箱(空間)を持っている場合が多い。(実際クラベスを叩く場合、もち手に空間を作って響かせるのだが・・) ギターやバイオリンなどの弦楽器、管楽器はもちろん、打楽器も太鼓などの共鳴箱合体のものや、マリンバのような、発音体と共鳴体が別仕立てのものまで。(シンバルは例外だが、素材が金属なので問題なく響く)
大学の授業などでは、マリンバのケンバンをはずして、ケンバンだけの音と共鳴管の上に設置したときの音のちがいを感じてもらったりすることも多い。初めてその音のちがいを見せると皆へ〜と驚いてくれることが多い。 特殊な例として、口琴のように口を共鳴箱として使ったりものもある。
*韓国の木魚、ベトナムのカエル「モコック」
母親が韓国土産にくれた木魚がいい音なので、それと、先日修善寺温泉ホテルで見つけたとてもいい音のカエルさんの音を出す。 これらもスリットドラムの仲間。ベトナムのカエルは、豊作を祈る雨乞いに使われたものらしい。カエルはこどもたちに人気だが、今回も人気で、講座終了後カエル触らせてくださいと言う人が多かった。シンプルな楽器だが意外にいい音を出すのは難しい。
*仏具として、チベットのシンギングボール小型、日本の仏壇のりん
仏具には金属の音が多く使われている、私見だが、残響の多い金属の音ひとつの音で、ここではないどこかへ思いをはせることができ、祈り、や瞑想にふさわしいのではないか、と思う。また音が鳴り消えてゆくまで、残響の長い音は、命が生まれ消えてゆく様を見ているようでもある。たくさんのリンは、現在修善寺の住職をされている方にいただきました。
*波紋音大、中、小、8台
波紋音の打面をみせ、スリットが入っているのでいろいろな音が出ること。 各サイズにより音域が変わること。製法がちがうことによる音のちがい。 バチによる音のちがい。 曲の分析。
などなど、普段コンサートでは話さないことを色々解説しました。
私のあと笙の田島さんが講座をして、最後に2人で共演しました。
*私がかつてパリコンセルバトワール・オルガン科で、笙のレクチャーを企画した話
笙はリードが内蔵されいて、息を使って吹くので、マウスオルガンとも言われる楽器です。そんな音を出す原理が近い楽器が日本にもある、ということをパリのオルガンを勉強する人に見せたくて、レクチャーを企画したことがあります。私の姉がオルガンをやっていてフランス在住が長い、ということがあってのことだが、今おもうとフランス語もできないのによく企画したものだと思う。が、このレクチャーを見た作曲家の学生さんが、作曲科の学生の前でもやってください、と言ってくれたので、きっとおもしろい内容だったのだと思う。1993年くらいの話です。
*正倉院復元楽器「う」に関して とても柔らかいよい音ですが、笙より音が弱いということですたれてしまった楽器です。楽器というのは、大衆化され経済効率のために大きな会場で演奏する必要からどんどん開発されてきた(オペラの発声など)と言えるとおもいますが、それで音色が犠牲になった部分もあると思います。オーケストラもモダンオーケストラよりバロックオーケストラで使われる弦の音のほうが、やわらかく、微妙な色気の有る音がします。私大好きな音で和琴という楽器があります。これもかなり小さな音しか出ないのですが、とても味わい深い音がします。
騒がしい音環境の東京にいると耳が悪くなってしまうので、笙や波紋音のような小さな生音を聞いてもらって、耳をすます、ということをしてもらいたいものです。
写真は
講座講師2人、田島、永田、が並んで記念撮影 田島和枝さんの衣装は狩衣(かりぎぬ)といって、平安時代の貴族が狩に行く服だそうです。活動的なので、そのご普段着として使われたらしいです。田島さんいわく「メンズカジュアルよ」だそうで・・。
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