■ 07/3/17〜19 国際芸術センター青森・ワークショップ 「楽譜を創造しょう」2007.3.22

さて、今年のワークショップ2日目のテーマは「楽譜」です。

楽譜というと、一般的にすぐ思い浮かぶのは、五線譜に音符がかいてあるものだとおもうのだが、実際には、様々な楽譜があるのである。

テーマを決めてから、いろいろ譜面をさがしたのだが、問題は邦楽の譜面でこれは結構大変だった。というのは、私自身が洋楽出身なので、邦楽の譜面の読みかたがよくわからないからだ。以前から、尺八や、雅楽の笙、などの楽器と積極的に共演してきたほうだとおもうが楽譜をみて共演するわけではないので、まったくといっていいほど、知識がなく、今回改めて、最初から勉強した。尺八、琵琶、三線、など身近にいる奏者のかたがたに、教えていただいたところ、みな、ポジション譜(何番目の弦のどこを押さえるか、などの)であること、あと細かいところのニュアンスは、師匠に直伝で教えていただく、という口伝の世界だった。

一方現代音楽のほうは、都合のいい、サイトがあったので、それを参考にさせていただいた。図形譜をみせると、いっせいに、「え〜これが譜面ですか〜」という声が上がる。http://homepage1.nifty.com/iberia/score_gallery.htm

HAUBENSTOCK−RAMATIの「Alone1」などはカンディンスキーばりの現代アートに見えてなかなかきれいなものだ。ジョン・ケージの有名な作品、「4分33秒」の楽譜は、TTACET TACET V TECETである。ようするに全楽章休み、ということである。この曲の音楽史的な意味もついでに解説しておいた。

音源もあったほうがいい、とおもい、家にあったCD、武満徹の「四季」を楽譜をみせながら、かける。音のほうは、1971年録音、演奏者 ツトム・ヤマシタ ミカエル・ランタ 佐藤英彦 山口恭範 と、現代音楽のトップ奏者の演奏である。

この曲は、1970年大阪万博の鉄鋼館で開かれた現代音楽祭のために書かれた曲である。
鉄鋼館のためにフランスのバッシエが制作した、金属からできた創作楽器が用いられた。
譜面はグラフィックな楽譜と言葉による演奏者へのインストラクションからなり、4人の奏者が相互の響に感応して、即興的に演奏するので、自由度の高い譜面ということがいえるとおもう。
このときの体験がもとで、その後、住まいの下町の鉄工所の廃材をもとに創作楽器をこつこつと作り出した、佐藤英彦さんの楽器を、私が手伝うことになったのだから、この曲とバッシエには、なんか縁を感じてしまう。私の知人でもこのときの演奏に衝撃を受けた人は結構いる。私はひとごみが嫌い、という理由で大阪万博へいかなかったので、このときの音をきけなかったのは、非常に残念である。

次に、五線譜で書かれた現代音楽の譜面も紹介した。オリビエ・メシアンの「七つの俳諧」。メシアンといえば鳥、というくらい、メシアンは鳥と関係が深い作曲家だが、これは、日本の鳥のなき声を素材とした曲である。

ちょうど、2000年2月4日サントリーホールで行われた日本フィルハーモニーの「20世紀の作曲家たち」というシリーズ第16回の演奏会に私がマリンバ奏者で出演し、そのときの録音があったので、マリンバパート譜と音を聞いてもらった。6番目の曲「軽井沢の鳥たち」でだれにでもわかる、「ほーほけきょ」というサウンドがあったので、それをみなさんにきいてもらった。それにしても、こ自然の鳥の鳴き声をこれほどまでに、細かく記譜するのをみると、今さらながら、西洋人だな〜とおもってしまうのです。
最近さっぱり楽譜をみないで即興演奏ばかりしているので、久しぶりに厳密にかかれている譜面をみると、よく演奏できたもんだ、と我ながら感心してしまった。

ながくなりましたが、まとめ、として、邦楽は、もともと口伝で師匠から弟子へ伝えるものなので、楽譜は、メモ程度で、あとのことは師匠から直伝で教えてもらうものである。間のある音楽なので、時間(リズム)の設定は、適当にかかれている場合もある。

一方、西洋音楽のほうは、グレゴリオ聖歌のような時代のころは、声明のようなひげのような譜面であったけれど、ネウマの時代を経て、だんだん精密になり、五線譜でかかれたものは世界のどの地域の人でも、楽譜がよめる人なら、ある程度再現可能なもの、となった、といえよう。そのかわり、その五線譜によって、呼吸などの微妙な表現ができずらくなり、結果として、西洋音楽には間がない、などという誤解もうまれやすくなったのではないか。私は西洋音楽にも間があり呼吸のない音楽など、音楽ではない、と考えている。五線譜には、微妙な間が表現しずらいので、そこは演奏者が行間を読む行為が必要になってくるわけです。


*写真は、ワークショップ参加者の作った「楽譜」です。
リンゴの皮で作ってあります。(上下の向きが逆です、すいません)



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