さて、私の勝手な趣味で、大学の授業のようなハイレベルの講義のあと、参加者みなさんに、自分なりの楽譜を創造してもらった。あとで演奏できれば、どんな手法でもいいですよ、という条件で書いてもらった。
全員紹介したいところだが、紙面の関係もあるので、言葉を使った一人の男性の作品を取り上げて見たい。
詩を書いている、というある男性は、言葉を使いたいのだが、ということだった。私は参考までに、サウンドスケープで有名な、マリーシエーファーさんの言葉を使った作品「When Words Sing」from Tinking Ear (1986年)を参考までに見てもらった。 これは、奏者が歩きながら言葉を発するのだが、動きの指示もあり、どこかまでいったら、「わめく」とか「くすくす笑う」とか行動の指示もある作品で、おもしろそうな作品である。
さて、この男性の作品は、というと、まず、詩の朗読があって、次には、それを解体し、間に音を出す、というもとであった。 詩の内容は 「誰にも会いたくない とつぶやき ため息の中 人恋しさがかくれてる」
↓ 誰にも会いたくない ため息の中 人恋しさがかくれてる とつぶやき ↓
ため息 がかくれている 誰にも 人恋しさ とつぶやき 会いたくない ↓
とどんどん展開していくのである。 これは、現代詩の手法としては、特に目新しいわけではないとおもうのだが、実際に この言葉の間に、木琴の音(といっても、いい音のする木が並んでいるだけの手作り木琴だが)や、木ノ実のジャランという音、それに本人の身体表現があると結構おもしろい表現となっていた。
次の展開として、グループで作品つくりをしてもらった。 ちょうど参加者が若者と中高年と半々くらいだったので、大人チーム、若者チームと 5人くらいづつ、2つのグループにわけて、作品つくりをおこなった。 大人チームは、先ほどの言葉を解体する手法を使い作品つくりをおこなった。私はつきっきりで、大人チームの作品ができあがるのを見守り、その結果、かなりおもしろい作品になった。言葉が繰り返される時には、音も変えて、言葉の調子も変えてください、という注文に、最初そんなのできないよ〜というおじさんも、だんだん調子がでてきて、結構おもしろがって、やってくれた。
一方若者組みは、センスのいいアートっぽいメンバーだったので、大丈夫だろうとおもい、放任しておいた。
さて、場所を移動し、ギャラリーで発表会だ。 まず、全員が並んで、自分が作ったレインスティックを持ち、順番に音をきいてもらう。
次にグループ作品をきいてもらう。
大人チームは練習の時とちがって、なにやら熱いパフォーマンスでテンションが高い。 練習の成果もあり、ひとつの作品に全員が集中して演奏している、というのがよく解る。普通のおじさん、おばさんが一生懸命やってくれていているのを見ていたらジーンときてしまった。
さて、若者のほうはどうだったろうか。 個々人が別別のことをして、お互いの関係性を絶っているようだ。一人はひさすら米を撒いて遊んでいる。一人は、ひたすら髪の毛をさわっている。一人はすくっと立っている。こういう手法はコンテンポラリーダンスでは、よく見る手法である。こういう作品だと一人一人が強い存在として、あること、が必要になってくる。その辺をもう少し追求してほしかった。 やはり、全体を客観的に見る第三者の目が必要だったようだ。 友人でもなく、たまたまここでであったもの同士が作品をまとめるというのは、なかなか難しい。そういう意味で、バラバラの存在というテーマは、リアリティがあっておもしろかったのだが。このテーマはおもしろいので、機会があればまたやってみたい。
そのあと、全員の合奏をして、発表会はおわり。 全員合奏の曲は一日目に楽器を触れてもらったあとに、私がまとめてつくった曲です。
最後に私とスタッフの椎啓さんのパフォーマンスです。
椎さんが弦楽器を使ってのノイズに対して、私は大きなブルーのごみ袋を使って音を出し 次に、金沢健一さんの音のかけらを擦ったり、モノを落としたりしてのセッション。 次に椎さんがハープに持ち替えて、美しい音を出し、私のほうは波紋音の小さいので ハープと会う音程だけ使っての二重奏。波紋音を使って他の楽器とセッションするときには、ソロの時とちがう演奏になるので、自分でもおもしろい。
以上が、2日間のワークショップのプログラムです。 翌日、一日だけの参加者には、レインステイックつくりと、楽器でのセッションをしました。
こうして、今年も雪に覆われたACACでのワークショップの日々が終わった。 今年は昨年より静かな日々だったけれど、また新な発見があり、私にとっても収穫のある日々だった。知らない土地で、知らない人々と出会い、何かを創造するなんてことができるワークショップは、やっぱりおもしろい。
*写真は、言葉を使った人がパフォーマンスしているところ。
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