■ 笙と正倉院復元楽器・竽(う)2009.4.12

雅楽の歴史に続いて、5月1日に共演する楽器・笙と竽の解説を書きました。

<楽器解説>

★笙―しょう
約3000年前、中国、アジア各地で演奏されていた笙は、雅楽の楽器として5〜7世紀頃に仏教とともに日本に伝わりました。それ以来、日本の宮廷音楽として伝承されたため、楽器の構造、奏法は、伝来時より現在まで、ほぼ当時のままです。雅楽では、ひちりきがメロディーを担当し、笙は和音を担当する。

笙の発音のしくみは、「さはり」、と呼ばれる舌(リード)と17本ある竹菅の共鳴です。(音の原理はハーモニカやパイプオルガンとほぼ同じです)吸っても吹いても音が鳴るので、音が切れ目なく続くことができます。調律は、古代中国の三文損益彭といわれる調律法で、天体や星の運行に従ったピタゴラス音律と同じ方法です。その音の調律のために、蜜蝋、松脂、や、孔雀石などを使い、とても根気の要る細かい作業をしなければなりません。

笙の姿は、鳳凰が羽を休めている姿を表しているといわれています。菅の下の部分には漆が塗られていて、蒔絵が施されているものもあり、工芸品としても美しいです。リードが息でしめらないようにするため、火鉢などで、あたためるしぐさも、茶道のお手前のようで、初めて見た人は何かの儀式だと思う人もいるくらいです。

古代の人々は笙の音に光、天体、無限、を感じていたようです。

★竽―う
笙とともに、日本に伝来するが、低音で音が小さく、笙のような華やかさがないためか、平安時代には、すでにすたれてしまいました。笙よりも長く、大体笙の2倍くらいの長さがあります。
千年以上途絶えていた楽器だが、正倉院・楽器復元の波にのり、現代に蘇る。
笙が光だとすると、竽は、太古の海のようにやわらかく響きます。

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5月1日の共演者は、私の大好きな笙奏者、田島和枝さんです。

田島さんとは、十数年来の友人で、ライブも一緒にやったり、舞踏公演でパリに一緒にいったり、アートフェスで韓国へいったり、色々おつきあいがあったのだが、ここ数年はお互いの活動が忙しく、共演も途絶えていた。
昨年、目白のギャラリーゆうどで、ばったり会い、すぐその場でセッション。一瞬で昔に戻ってしまった、というわけです。
相変わらずの、ゆったりした呼吸で、彼女のとなりにいるだけで、こちらの呼吸まで楽になるのです。

笙の音を聴きながら、波紋音を演奏する、これはなかなかいい気分です。

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田島 和枝 プロフィール
Tajima Kazue
「笙」と正倉院復元楽器・「竽」の奏者
笙を豊英秋氏(宮内庁式部職楽部主席楽長)、宮田まゆみ氏、
石川高氏に、古代歌謡・雅楽合奏を芝祐靖氏に、右舞を豊英秋氏に師事。
国立劇場雅楽公演、八ヶ岳高原音楽祭、タングルウッド音楽祭、
ウィーンモデルン、坂本龍一・地雷ゼロキャンペーン、
岡野玲子・陰陽師CD等、雅楽古典曲から現代曲まで多方面で演奏する。
またソロ活動として、さまざまなアーティストと共演している。
雅楽合奏団 「伶楽舎」に所属。
ウェブサイト http://tajimakazue.jp/




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